Skip to content
石川フィルハーモニー交響楽団は石川県金沢市で活動しているアマチュアオーケストラです。
  • プロフィール
  • 演奏会情報
  • 団員募集
  • 練習日程
  • 音楽コラム
  • リンク
  • 掲示板
  • 団員専用ページ
  • お知らせ

音楽コラム

    Vol.5-2「弦楽器で大音量を出すために」

    2010/10/16

     【物理的モデルの見直し】
    前回までの話では、弓を「硬い真っ直ぐな棒」と置き換えたモデルを想定して話を進めてきました。しかし、響きのあるフォルテを出すためには、もっと現実に近いモデルを考える必要があります。

    図1(硬い棒のモデル)と図2(現実に近いモデル)を比較してみてください


    図1    図2    
                   

     

     

     

     

    図1 硬い棒のモデル          

     

     

     

     

     

     


    図2 現実に近いモデル


            
        
    図1のモデルでは、弦を横方向に振動させるためには摩擦力に頼るしかありません。しかし摩擦力を強くするためには、(せっかく生み出した横方向の振動を抑制してしまう)垂直方向の力をかけなければならないのです。
    一方、図2のモデルでは弓の毛が横からの力を直接与えられるような位置関係にあります。このような位置関係を利用すると、垂直方向の圧力に頼らず横方向に弦を振動させることが可能になります。
    垂直方向の圧力では弦の振動を邪魔して音が潰れるという副作用がありましたが、水平方向へ直接与える力であればそのような副作用はありません。響きのあるフォルテを出すためにはこのような「水平方向の圧力」で音を出すことが求められるのです。

    【なぜ豊かな音を出せるのか?】
    もちろん図2のモデルでもフォルテを弾く時には垂直方向の圧力が必要なのですが、理想的な弾き方をすれば潰れていない豊かな音で弾くことができます。なぜ垂直方向の圧力をかけていても音が潰れないのでしょうか?
    図1のモデルと異なるのは、弓の毛のたわみやスティックの弾性が力を吸収してくれる点にあります。基本的には「弦の張力>弓の毛の張力」であるため、圧力をかけても弦は下方向へは押しつけられず、その代わりとして弓の毛がスティックの方に近づいていきます。(図2の上図のようなイメージ)
    図1のモデルでは圧力をかければかけるほど弦が押しつけられるため、弦の水平方向の振動を阻害する要因になっていました。一方、図2のモデルでは「一定の圧力までは」弓がたわんでくれることにより弦の振動を阻害せずに済むのです。
    しかし弓が助けてくれるのにも限界があります。弓のたわみで吸収し切れなかった力は弦を下方向に押し下げる方向に逃げていくことになり、水平方向の振動を阻害する要因となってしまいます。
    従って、響きのあるフォルテを出すためには「適度な圧力」を見極める必要があります。

    「適度な圧力」を意識せずにやみくもに圧力をかけているだけでは、響きのある“安定した”フォルテは生み出せません。
    次ページでは「適度な圧力のかけ方」について、もう少し掘り下げていきたいと思います。

    Vol.5-3「弦楽器で大音量を出すために」

    2010/10/16

     【圧力をかける? or 圧力を保つ?】

    響きのあるフォルテを出すためには「適度な圧力をかけながら」ボーイングをコントロールする必要があります。いや、イメージ的には「適度な圧力を保ちながら」と言った方がいいでしょうか。
    まず、「圧力をかける」をイメージした時の特徴(デメリット)を挙げてみます。

    ●圧力をかける 
    ・「下方向の力をかけ続ける」というイメージがある。
    ・ 「圧力をかける」と聞くと、多くの人が肘を高く上げて小手先で弓を押さえつけてしまう。
    →不自然なフォームとなり、弓を水平方向に動かしにくくなる。
    ・ どこまで「圧力をかけ」ていいのか、その限界がわからない。
    ・ 弓を動かす瞬間にはかける圧力意識するが、ボーイングの途中では意識されないことが多い。(途中で圧力が抜けてしまう)
    ・ 弓を動かす瞬間に圧力をかけ始めるため、弓が上下にバウンドしてしまう。
    (最初に弓を置いて始めなければ、叩きつける形になり制御不可能なほど暴れてしまう)

    次に「圧力を保つ弾き方」について説明します。
        
        ●圧力を保つ
    ・ まず弓を置いて準備しておく     
        

        

    「圧力を保つ」ためには、最初から圧力がかかっていなければなりません。
    動き始める前に弓を置き、その時に「保つべき圧力」を設定します。
    この作業がボーイング開始時の弾きやすさを決定すると言っても過言ではありません。この圧力設定は楽器や弓の性能によって異なります。自分の楽器はどの程度圧力が適切なのかを是非見つけてみてください。
    ※元で弾く場合は弓の重みだけで十分な圧力がかかります。決して圧力をかけすぎないよう注意してください。
    ・ 弓からの(上向きの)反発力を感じる
        弓を置いて準備すると、設定した圧力に応じて弓がたわみます。すると、たわんだ弓は弾性によって元に戻ろうとするため、弓を押し返すような上向きの反発力が発生します。
    安定したボウイングをするためには、この反発力によって弓が押し戻されないようにバランスを取る必要があります。「適度な圧力」とは、反発力との釣り合いが取れた(バランスの取れた)状態であると言えます。
    ・「圧力を保ち」ながら水平方向に弓を動かす
        以上の準備ができたら、反発力によって弓が押し戻されないように圧力を保ちながら水平方向に動かします。この始動のタイミングが最も集中すべき瞬間です。というのも、始動の瞬間は圧力のバランスが崩れ易く、反発力に負けて弓が押し戻されやすくなるためです。これを如何に制御できるかが安定した音を弾くコツになります。

    「圧力をかける」、「圧力を保つ」について考えてきましたが、この2つの大きな違いは何でしょうか?
    「圧力をかける」場合、下方向に積極的に圧力をかけ続ける傾向にあります。一方、「圧力を保つ」場合は、弓からの反発力に押し戻されないようにバランスを取りながら圧力を調整しています。

    ・ 意識している力の向きが「下向き」と「上向き」の違い
    ・ 「圧力をかけ続ける」と「反発力とのバランスを取る」の違い

    この意識の違いだけで音がまるで変わってきます。この違いを是非実感してみてください!

    【音量を上げるために】
    弓を置いて準備できたら、あとは水平方向に引っ張るだけで弦を水平方向に効率良く振動させることができます。
    音量は水平方向の振動で決まるため、音量を上げたいと思ったら水平方向に引っ張る力(水平方向の圧力)を強くするように意識してみてください。その際に弓がすべるようなら、弓を置く段階での設定圧力をもう少し強くしてみましょう。
    ただし、この時も「押さえつける」イメージではなく、「腕の重さを乗せて」弓の押し込み量を調節することが大事です。

    それでも弓がすべるようなら以下の点を見直してみましょう。
    ・ 圧力、弓の位置、スピードがバランスの取れた関係になっているか?
    (圧力が大きいほど駒寄りで弾く必要があり、駒寄りではゆっくり弾く必要がある)
    ・ 弓の毛を張りすぎていないか?
    ・「適度な」松ヤニが付いているか?
     (毛替えが必要な弓に対して、松ヤニの粘り気だけで音を出そうとするのは好ましくありません)
    ・毛替えをするべき時期ではないか?

    【弓が弦に吸い付く】
    弦楽器奏者は調子が良い時によく「弓が弦に吸い付く」という表現をよく使います。では、どのような時に「弓が吸い付いた」感覚を感じるのでしょうか?
    当たり前の話ですが、弓が滑らずに効率良く弦を振動させている時ですね。
    そのためには
    「準備の段階で弓をしっかり弦に食い込ませて、適度なスピードで水平方向の圧力を加える」
    このことをしっかり意識するだけで弓が弦を捕らえる確率は大幅にUPすると思います。

    【安定した音を出すために】
    弓の返しの勢いだけで音を出している人を多くみかけますが、このような音の出し方では最初のインパクトだけが強く、弓が吸い付いていないため音量・音質が不均質になってしまいます。
    上手な人の演奏を思い出してみてください。勢いに頼ったボーイングではなく、元から先まで均質な音を出していて安定感がありませんか?
    安定した音を出すためには、惰性で「音が出る」のではなく「吸い付いた弓で意識的に音を出す」感覚を持つのが大切です。これが、いわゆる右手の技術であり、弦楽器奏者が大変苦労する点なのですね。

    【良い弓とは】
    突然ですが、「良い弓」とは何でしょうか?
    弓について考える時に「重心」や「弾性」といった言葉がよく出てきます。この2項目について考えてみましょう。
    ● 「重心」について
    バイオリンの弓の重さは60g前後であり、実はどの弓もそんなに大きな違いはありません。同じ重さの弓でも重く感じたり軽く感じる理由は重心の位置が大きく関係しています。
    (1) 扱いやすい位置に重心があること
    (2) 弓の重さを弦に効率的に乗せられる位置に重心があること
    この2点をバランス良く満たすものが良い弓といえます。

    ● 「弾性」について
    前ページでは弓の物理的なモデルについてお話しましたが、弓を「硬い棒」とイメージした場合、音が潰れてしまって「響きのあるフォルテ」が出せません。
    良い弓とは「弦の水平方向の振動」を邪魔することのない弾性に優れた造りをしているものです。

    弓の購入を検討する機会がある方は、「良い弓はどういうものか」を頭の片隅に持って弓選びをされることをオススメします。

    次のページが最後のまとめです。あともう少しだけ、お付き合いください。

    Vol.5-4「弦楽器で大音量を出すために」

    2010/10/16

        
        【まとめ】
    良い音を出すためのポイントを簡単にまとめてみます。
    (1)弓を弦の上に置いて準備する
    (2) 腕の重みをのせ、弓を押し込み量を決定する(弓の毛が弦に軽く食い込むようなイメージ)
    (2)弓を水平方向に引っ張る。(弓の位置、スピードを調節しながら)
    必要なのはこの3点だと考えます。

    「え、結局これだけ?」と思うほど結果は単純ですよね。でも物理的な裏付けを理解するのとしないのでは練習の効果は全然違うものになります。
    最終的な結果だけを覚えるのではなく、その考えに至った過程を是非上達のヒントにしてもらいたいと思っています。

    せっかくですので、ここで「アレクサンダー・テクニーク」というものを紹介したいと思います。

    【アレクサンダー・テクニークとは?】
    アレクサンダー・テクニークは19世紀のオーストラリア人、F.M.アレクサ ンダー氏が発見した、自分自身の使い方をよくするためのメソッドであり、どのように心身を含めた「自分」を使っているのか、どうしたら「自分」をより活かせるのかについての理解を深め、本来備わっている力を発揮するための実践的な方法です。欧米の多くの国々で、音楽家、ロックミュージシャン、俳優、スポーツ選手、舞踊家、パフォーマーが、トレーニングの中にアレクサンダー・テクニークを取り入れています。

    【エンド・ゲイニング】
    アレクサンダー・テクニークについて調べていると「エンド・ゲイニング(end-gaining)」という言葉が出てきます。これは、アレクサンダー・テクニークの中心となる概念の一つであり、結果だけに気を取られること、いわゆる結果主義とか成果主義といわれるようなものです。
    わかりやすい例を以下に示します。
    腰痛を持ったスポーツ選手に対して、医師が「腰痛は腰が弱いからですね」と判断してしまうことはエンド・ゲイニングと言えます。腰痛という結果だけに注目していて、原因(間違った身体の使い方)には目を向けていないからです。さらに、医師が指示した治療法(水泳など)はエンド・ゲイニングな治療と言えます。水泳をやっても間違った身体の使い方が治るわけではないからです。

    もう一つ、エンド・ゲイニング的なヴァイオリン演奏の例を挙げておきます。
    たまに弓の毛をパンパンに張りすぎている人を見かけます。理由はフォルテを弾くと弓の毛がスティックに擦れてしまうから、弓の張りを強くしてスティックに触れるのを防ぐためです。
    おそらく、このような人は以下の考え方を持っていると思われます。

    「音量を出すには上から強く押さえつける必要がある。」

    これは2ページ目の図1のモデルで説明したように、弓を「硬い真っ直ぐな棒」とイメージした考え方だと言えます。実際の弓は図2のようなモデルであり、そのモデルに合った演奏方法に修正すれば弓の毛を張りすぎなくても大きな音が出せることに気付いていないのです。
    根本的な原因(誤った認識、演奏方法)を見直すのではなく、対症療法的に弓の張りを強くしてスティックに触れないようにすること、これこそまさにエンド・ゲイニングの一例だと言えるのではないでしょうか。
    弓を張りすぎると以下のような悪循環があります。
    ・音量を出すために垂直方向の圧力に頼る音になるため、潰れたフォルテしか出せない。
    ・圧力に頼った弾き方では、大きな音量を出せないためさらに圧力を強くしたくなる。
    ・ 圧力を強くするとさらに弓を張らないと毛とスティックが触れてしまう。
    ・ 毛を強く張れば張るほど弓は弾力を失い、硬い棒のような状態になってしまう。
    →本来あるべき弓の性能を活かすことができない。
    ・ 張りすぎた状態になると、理想的な弾き方で弾いても弓が滑ってしまう。
    →理想的な弾き方が実感できず、いつまでも圧力に頼った弾き方しかできなくなる。

    弓を張りすぎると潰れたフォルテしか出せないだけでなく、理想的な弾き方を習得する機会までも失ってしまうのです。この原因がたった1つの「勘違い」から来ているものだというのは驚きですよね!

    【最後に】
    アレクサンダー・テクニークでは、「上達するためのテクニックを学ぶ」というよりは、「上手くできない要因を発見して排除する」を重視していることに特徴があります。
    これらの要因を楽器の演奏で考えてみると、
    ・ ちょっとした思い込み、勘違い
    ・ 誤った身体の使い方
    ・ 理にかなっていないフォーム
    などが挙げられます。

    自分の弱点(思い込みや癖)をいっぱい発見して、一つ一つ解決していくことが上達の近道だと考えます。上達すれば表現力が増し、自分の理想の音にどんどん近づけます。楽しさも倍増です♪
    みなさんも自分の演奏方法(フォームや身体の使い方など)が本当に理にかなっているものか検証してみてはいかがでしょうか?

    Older PostsNewer Posts

音楽コラム

Vol.7「上達」について
by ishipho on 2018/02/22
Vol.6「エコな演奏」の薦め
by ishipho on 2011/09/22
Vol.5-1 「弦楽器で大音量を出すために」
by ishipho on 2010/10/16
Vol.5-2「弦楽器で大音量を出すために」
by ishipho on 2010/10/16
Vol.5-3「弦楽器で大音量を出すために」
by ishipho on 2010/10/16
Vol.5-4「弦楽器で大音量を出すために」
by ishipho on 2010/10/16
Vol.4 「アンサンブル」
by ishipho on 2007/08/29
Vol.3 「イメージ」
by ishipho on 2007/06/22
Vol.2 「和音の話」
by ishipho on 2007/02/06
Vol.1 「祝!コラム開設」
by ishipho on 2007/01/12
  • facebook
  • お問い合わせ
Copyright © 2025 石川フィルハーモニー交響楽団. All rights reserved.